2005年02月11日

アロマテラピー概論・上級

アロマテラピ-概論/上級

1)アロマテラピ-とは
2)アロマテラピ-の位置付け
3)精油とは
4)アロマテラピ-の実践
5)現在の日本におけるアロマテラピ-

1)アロマテラピ-とは
アロマ(芳香)、セラピ-(療法)を組み合わせた言葉がアロマセラピ-
(芳香療法)。アロマセラピ-は英語読み、アロマテラピ-はフランス語読み。
アロマセラピ-は、花、葉、果実などから取り出した精油(エッセンシャルオ
イル)を人体に適用し、心と身体と精神の不調を癒し、人が本来持っている自
然治癒力を高める事を目的とした、全体論的な療法の一つ。
[全体論・ホリズム]生命を構成する各組織や器官の働きの総和よりも、
各組織や器官が一つにまとまった生命体として全体的に機能した方が働
きが大きいという考え方で、1926年にJ.C.スマッツが始めてこの
言葉を使用した。植物に置き換えると、植物の中に含まれる個々の薬用成
分である化学物質をあわせた効き目よりも、その植物が全体として発揮す
る効き目の方が大きいという事。
全体論的な医療とは、疾病を身体全体の不均衡、不調和としてみるもの。
病気を敵対視したり、攻撃したり、根絶したりするものであるとは考えず、
その根底にある不均衡を直そうとするものである。

2)アロマテラピ-の位置付け
アロマテラピ-は疾病そのものを完全に治癒させる西洋医学に対し、上記の全
体論的要素を持つ東洋医学と同質のものとされている。だが各国で古くから
取り入れられていた植物療法(フィトテラピ-)の一つでもある為、位置付
けは難しい。

3)精油

a)精油とは
精油(エッセンシャルオイル)とは、植物から抽出された芳香物質の事。
その植物によってどの部分に含まれているのか決まっている。
ハ-ブとアロマテラピ-は共通しているが、ハ-ブ全てから精油が取れるわ
けではない。ハ-ブとは人体に有用な成分の含まれている植物の総称で、
約34万種ある。その中でも実際に使用できるものは8千種程。
そのハ-ブから、精油が取れるものは約200種類ほどである。

b)精油の役割
・精油がその植物自体に果たす役割
精油成分(香り)によって虫を誘う。―― 繁殖
精油成分(香り)によって虫を寄せ付けない。―― 害虫から身を守る
免疫を作り出す。
病気から身を守る。
毒素を排泄する。
精油は植物のホルモン(フィトホルモン)と言われ、植物の生命力そのもの
だと言われている。
・精油が人間の心身に及ぼす作用

*精神に対する作用

緊張感を和らげ、リラックスさせる。
イライラや興奮を鎮め、気分を落ち着かせる。
疲労感を回復させる。
爽快感を与え、元気の回復に役立つ。
頭をすっきりさせ、集中力や記憶力を高める。
不安、抑鬱的な気分を和らげる。
ストレスを緩和し幸福感を与える。
安眠を促す。

*身体に対する作用
各器官の働きを正常化させる。
筋肉の緊張を和らげ、身体の柔軟性を高める。
頭痛、生理通、胃痛、筋肉痛などの痛みを和らげる。
冷え性、肩凝り、むくみ、便秘などの改善に役立つ。
身体の免疫力を強化する。
各臓器の強壮。
全身を浄化し、代謝を高める。
肥満の予防や改善に役立つ。
肌に対する作用
---乾性、脂性に傾いた肌を正常に整える。
---老化のプロセスを遅らせる。
---ニキビ、湿疹、しみ、肌荒れなどのトラブルの改善に役立つ。
---アレルギ-の症状や肌の炎症を和らげる。
---肌を清浄に保ち、感染症を予防する。
---皮膚の新陳代謝、分泌機能を正常化させる。

c)精油の抽出方法
1)水蒸気蒸留法(エッセンシャルオイル)最も多い方法
2)圧搾法(エッセンス)有機栽培のものに限る
3)溶剤抽出法(アブソリュ-ト) 肌(顔)への使用には向かない
4)温侵法、冷侵法 現在は観光客向けのデモのみ

d)精油の抽出部
植物によって、精油の取れる部分は決まっている。
同じ植物でも抽出部によってまったく異なる精油が取れるものもある。

( Citrus aurantium )オレンジ
花から抽出 ―― ネロリ
果皮から抽出 ―― オレンジ
葉から抽出 ―― プチグレン
部から1種類の精油が取れるものと、2部から1種類の精油が取れるものが
ある。

(Mentha piperita)ペパ-ミント
抽出部 ―― 花の先端、葉

花 カモミ-ル、ジャスミン、ロ-ズ、イランイラン、ネロリ
葉 ユ-カリ、レモングラス、パチュリ-、ティ-トゥリ-
果実、球果 サイプレス、ブラックペッパ-、ジュニパ-
果皮 ベルガモット、グレ-プフル-ツ、レモン、マンダリン
種子 フェンネル、キャロットシ-ド
木質部 ロ-ズウッド、サンダルウッド
樹脂 フランキンセンス、ベンゾイン
根 ジンジャ-、ベチバ-

e)精油の揮発速度
精油とは非常に揮発性の高い物質である。精油の揮発速度を示す言葉を
ノ-トという。3種類のノ-トがあるが、数値が決まっているわけではない
為、ノ-トの分類にはばらつきがある。
1)トップノ-ト
揮発速度が速い。香りをすぐに感知できる。
精神、肉体を活性化させる作用があるものが多い。
果皮。
2)ミドルノ-ト
中間の揮発速度。
生理機能(新陳代謝、消化器能)をスム-ズにする働きがあるものが多い。
花、葉。
3)ベ-スノ-ト
揮発速度が遅い。香りが残るもの。
精神、肉体を鎮静させる作用があるものがおおい。
樹脂、木質部。

f)合成香料と精油の違い
精油は植物から抽出される、非常に揮発性の高い100%天然の芳香物質であ
る。その主な成分は解明されているが、中には現代の科学では解明できない成
分もある。

例) ツヨン(毒性あり) その他の成分(毒性なし) 解明できない成分
sage 52.5% 47.48% 0.02%
warmwood 53% 46.97% 0.03%
セ-ジは0.02%の成分がツヨンの毒性を中和するので使用できる。
ワ-ムウッドは0.03%の成分がツヨンの毒性を中和出来ないので使用不可能。

合成香料では、解明されていない成分を作る事は出来ないので、香りは同じ
ようなものが作れるが、アロマテラピ-で使用できるものは作れない。
このように、精油はその成分の微妙なバランスで様々な役割を果たすように
出来ている。又、精油は天然の植物から抽出する為、産地や年によって成分
のパ-センテ-ジに差が生じてくる。ロットナンバ-毎に香りや色が多少異
なる事があるが、効能自体にそんなに変わりはない。(効能が変わるという
事は、精油のその植物自身に対する効能も変わるという事で、そうなると植
物自身も生きていられない為。)
医療用に使用される精油は、成分パ-センテ-ジを厳密にチェックしなけれ
ばならない為、成分が既定値に収まったものだけを使用する。このような精
油をケモタイプ精油という。

g)精油の値段
その植物の精油の含有量
抽出法
原産地
その植物の希少性
抽出する時期、時間帯
その年の気象条件

h)精油の保存法
光、熱、温度に弱いので、遮光瓶に入れて冷暗所に保存する。
柑橘系のものは半年程度、その他のものは1年から2年もつ。
古くなると色や香りが変わってくる。成分も多少変わっている可能性があるので使用しない方がよい。(拡散には使用出来る)

***精油使用上の注意***
個々のオイルの特性を知った上で使用する事。
内服は絶対にしない事。アドバイスもしない。
肌に直接付ける場合は純粋な植物油かアルコ-ル、精製水、芳香蒸留水で、正しい濃度で希釈してから使用する事。
粘膜には使用しない事。
火の近く、子どもや動物の手の届くところには置かない。

4)アロマテラピ-の実践

アロマテラピ-を実践していく上で、精油は様々な形で使用される。
個人個人の健康状態、精神状態、肌質、体質などにより適切な精油を選
び、適切な方法で使用する事で大きな効果を得る事が出来る。しかし、
その使用方法、濃度などを間違えると逆効果となる場合もあるので、個々
の精油の特徴、使用方法について充分な知識を得てから実践する事が必
要である。(ヨ-ロッパ各国において、、アロマテラピ-は補助医療とし
て用いられているという事と、日本ではまだアロマテラピ-の歴史も浅
く、医療の一つとしては認められていない事を留意し、使用法、又指導
の方法にも充分注意が必要である。)

a)拡散
精油を拡散器(ディフュ-ザ-)、アロマポット、スプレ-等を使用して部屋の
中に拡散させる方法。すべての精油に消毒、殺菌、抗菌性がある為、空気中の雑
菌を中和し、部屋の中を清潔に快適に保つ。目的に応じて精油を変えれば、その
芳香によってリラックス効果、リフレッシュ効果、集中力を高める効果、安眠効
果などを得る事が出来る。
1)アロマポットによる拡散
アロマポットにお湯をはり、精油を3滴から5滴ほど入れ下からろ
うそくであたためる。香りが薄くなったら1時間に3滴を目安に、
足していく。精油は1種類でも数種類混ぜたものでも構わない。
滴数は部屋の広さや湿度などによって適宜変える。心地よい程度の
濃度で。
2)ル-ムスプレ-による拡散
蒸留水、又は精製水と無水エタノ-ルと精油で作る事が出来る。
刺激の弱い精油なら、蒸留水に混ぜるだけでも構わない。
100mlのル-ムスプレ-
無水エタノ-ル10から20mlを容器に入れる。
精油を5滴から20滴入れてよく振る。(0.25~1%)
蒸留水を90から80mlいれる。
b)吸入
熱湯を注いだ洗面器に精油を3から5滴加え、周囲をタオルなどで覆い、
蒸気ともに揮発した精油の成分を深く吸い込む方法。呼吸器系、特に気道の
トラブルの改善に役立つ。

c)沐浴
精油を浴槽に入れ、湯気といっしょに吸い込む方法。又湯の中に拡散された精
油が肌から吸収される。3から5滴をそのまま浴槽に入れ、よく混ぜてから
40度以下のお湯で20分程度入浴すると効果がある。
刺激の強い精油を使う場合、又敏感肌の人、お年寄り、子供には、大さじ一杯
の植物油、又はカップ一杯の牛乳(脂肪分の多いもの)に精油を1から2滴混
ぜてから浴槽に入れる。代謝機能を高める、血液循環をよくする、体を温める
という目的に合った方法。

一般成人 60歳以上 1から7歳 2ヶ月から1歳未満 0から2ヶ月
3から6滴 4滴以下 3滴以下 2滴以下 1滴以下

d)湿布
湯、又は冷水の入った洗面器に精油を3から5滴入れ、ガ-ゼ等を浸し、痛い
部分などに当てる。筋肉痛、目の疲れ、むくみなどに適した方法。

e)マッサ-ジ
体質、肌質等に適した数種類の精油を植物油で適切な濃度に希釈し、顔、足、
背中など、全身のマッサ-ジに使用する。心身の様々な不調を改善するのにも
っとも適した方法。

年齢 一般成人 60歳以上 1~7歳 2ヶ月~1歳未満 0~2ヶ月未満


20ml 1~3%
4~12滴 1%以下
4滴以下 0.5%以下
2滴以下 不可 不可

身体
20ml 1~5%
4~20滴 2%以下
8滴以下 1.5%以下
6滴以下 1%以下
4滴以下 0.5%以下
2滴以下
0~1歳未満が使用出来る精油はラベンダ-、カモミ-ル、マンダリンのみ。

5)現在の日本におけるアロマテラピ-
現時点において、日本ではアロマテラピ-の公式な資格というものはない。
ヨ-ロッパにおいても、補助医療として認められ、アロマテラピ-ケアに保険が
効く国もあるが、協会の認定資格にとどまり、国家試験はない。医療従事者や針
灸師がケアを行っている事が多い。日本での状況は、
病院臨床(針灸療養所、精神科、皮膚科、助産院など)
エステティックサロンでの使用
大学、各企業での研究(化粧品メ-カ-、香料会社など)
ハ-ブ会社、メ-カ-、出版社主催のワ-クショップ
家庭でのホ-ムアロマテラピ-
学会セミナ-等
等の枠にとどまっているが、1980年末頃より(香りの時代)、又最近では
(癒しの時代)等と呼ばれるようになり、この中でアロマテラピ-は香りと自然療
法とのあり方に、意識革命をもたらすきっかけとなった。特に、
生活環境の都市化や、情報化時代を反映し、精神的不安の増大。
現代医学において、副作用などの反省から自然療法が見直されるようになった事。
ストレスを解消する療法として香りの有用性が見直されてきた。
自然災害や、犯罪の増加、低年齢化など、様々な要因によって、
昔が見直されている。
等の背景を考えると、今後アロマテラピ-は必要不可欠なものになっていくと考
えられる。いずれにせよ、アロマテラピ-の正しい内容の普及、教育は当分の間
の課題となる。

投稿者 kiyo : 00:01 | コメント (0)